研究開発編

case 01

研究開発編

motive

入社動機

大学院では分析に関する研究室に所属し、トレーサビリティ体系における定量分析の際に基準となる「標準物質」を、数少ない絶対定量法の一つである電量滴定法で定量評価する評価方法を開発する研究に取り組みました。当時はバブル経済崩壊後の超就職氷河期の中での就職活動を行っため、専攻にとらわれず幅広い業界にアプローチをしていました。その中でも、指導教員の教授から勧められたNOKは世の中に必要とされている企業であり、やりがいを感じられると思い入社を決めました。

2003年(入社1年目)~

イーグル工業株式会社入社後、
NOK筑波技術研究所(当時)に勤務

「摩擦」「接着」「磁性流体」などシールの核心的技術に触れる。
EKKの技術を進化・深化・新化させる気持ちとともに。

入社後まもなくして勤務したNOK筑波技術研究所では、「摩擦」「接着」「磁性流体(詳細次章)」などシール技術の核心部分に触れる多くの機会を得ました。大学院で「分析」に取り組んでいたものの、シールに関する知識は初めての世界であり、この2年間に数多くのことを学ぶことができました。高度な技術を有する先輩方のご指導があったおかげで、実力不足を痛感しながらも毎日が刺激的でした。上司からの「自分がEKKの技術を進化・深化・新化させる気持ちで取り組みなさい」という言葉を今でも大切にしていますし、それを実践するのが自身のミッションととらえています。また、多忙な先輩が一緒に考えて助言してくださったり、手を動かしてくださった姿は印象に残っており、若手技術者を育成する立場になった現在、自身でもその姿勢を心掛けています。

2005年(入社3年目)~

イーグル工業株式会社
技術本部 研究部

市場の不具合対応に現場の人と共に問題解決にあたる。
感謝と素直さ、謙虚さは技術者にとって大切な要素。

入社3年目にして、品質向上のための業務を任されました。対象となった製品は「磁性流体シール」。“磁性流体”とは液体でありながら、磁石に引き寄せられる性質を持つ液体のことです。磁性流体を使用したシールは、回転軸と永久磁石の間に磁性流体を磁力で固定させることにより、回転軸に液状のOリングを形成して、主に大気と真空を遮断することで軸の密封を行うもの。その不具合に対処するため、製造現場の方々と一緒に問題解決に取り組みました。痛感したのは、自分がいかに多くの人に助けられているかということでした。製造現場である新潟に住んでいる感覚になるまで足繁く通い、現場の方々と連携・協働。上司からは「やりたいようにやってみろ」と背中を押してもらいました。現場の意見や現場が感じている事には品質を向上させられる多くのヒントがあること、難しいと感じた技術的課題も教科書の基礎的な内容に立ち返ることでブレークスルー出来ることを実感し、先人への感謝と素直さや謙虚さが技術者にとって大切な要素であると改めて考えるようになりました。

2007年(入社5年目)~

イーグル工業株式会社
技術本部 開発部

ロバスト性を高める新規の材料開発で新たなチャレンジ。
化学的アプローチで本格的に「摩擦」の研究を開始。

新規材料の開発において、高度な物性の付与を目的に、従来工程の大幅な変更に着手しました。材料開発の場合、主に混ぜ物(主原料や添加物)を代える方法が採用されますが、私たちは材料だけでなく混ぜ方など製造工程を抜本的に変える取り組みを進めました。シンプルにいえば、物理的、熱力学的な原則に立ち返り、自然法則に逆らわない方法を採用。意識したのはシールのロバスト性(頑強性)をいかに高めるかです。試作過程で、一つひとつ成果が積み上がっていく感覚もありましたが、納得のいく物性を得られない難しさに途方に暮れることもありました。様々な事情で製品化には至りませんでしたが、既存材料の歩留りや品質の向上に寄与する技術として活用されており、技術者としての自信につながる貴重な経験でした。その後、「摩擦」界面の現象に化学的視点で本格的に取り組み始めました。摩擦面では摩耗という現象が起きますが、過大な摩耗はシール性能の低下、つまり「漏れ」に繋がります。摩耗はなぜ起き、それを抑制するためにどうするべきかについて研究を続けていく中で、社会人ドクターという新たなチャレンジをスタートさせました。

2021年(入社18年目)~

イーグル工業株式会社 技術本部 材料
技術部 材料技術一課

社会人ドクターとして博士学位を取得。
「摩擦」の世界を深く探究、その成果が今に活きている。

2016年に大学院に入学し、社会人ドクターとして「摩擦」の研究に取り組み、5年間かけて博士課程後期を修了、学位を修めました。以前から上司に学位取得を勧められていましたが、この時期、”メカニカルシール”における「摩擦」の知見をより深めたいと思い、一念発起してチャレンジしました。博士論文は、「炭化ケイ素同士のメカニカルシール型面接触における水中低摩擦発現のためのナノ界面創成となじみ制御の研究」というものです。炭化ケイ素同士の水中面接触摩擦においては、上手くなじませると低摩擦ナノ界面が形成され、低摩擦が実現します。私が現在取り組んでいる「メカニカルシール(詳細次章)」では、「低摩擦」発現を含めた「摩擦の制御」が重要なテーマになっており、学位取得時の研究が今の仕事にダイレクトに反映されています。学位取得は、妥協の無い議論と丁寧な御指導をいただいた教授の教えがなければ、とても達成できないことでしたが、「守・破・離」(※)の「守」に徹することで、摩擦研究の入り口に立てたと感謝しています。

※「守・破・離」……茶道や武道の修行の段階を示したもの。守は師匠に教わった「型」を徹底的に守ること。破は修行を重ねて既存の「型」を破ること、離は自分独自の「型」を完成させること。

2022年(入社19年目)~

イーグル工業株式会社 技術本部 材料技術部 材料技術一課

「メカニカルシール」における摩擦現象を探求。
「低摩擦」実現に向けて、新たな材料開発に取り組む。

現在、「メカニカルシール」などの各種シール材料の技術部門のマネジメントを担当しています。「メカニカルシール」はポンプなどの回転機械に取り付けて、高い圧力下で高速回転する軸の周りから生じる流体の漏れを制御する部品です。シャフトと一緒に回転するリングと回転機械本体に固定されるリング、2つの面が接触することで流体の漏れを制御しますが、両方の面を強く押し付けすぎると接触している面がボロボロになって、流体が漏れてしまいます。精緻な設計によって適切な摩擦状態を維持することで、流体が入り込み潤滑剤として作用することで、長期にわたり安定した性能を維持できます。その際、重要なポイントとなるのが接触する2つの面の摩擦を良い塩梅でコントロールすることです。優れたシール性能を持続するためのロバスト性(高耐久性・高信頼性)を得るためには、「摩擦の制御」を実現させる必要があり、それを実現する材料開発に取り組んでいます。シールにおける摩擦現象は非常に奥深い世界であり、執念深く日々チャレンジを続けています。

challenge

これから挑戦したいことは?

「摩擦」探究の世界にゴールはなく、一定の成果が生まれても、さらにより良い材料を探求し続ける必要があります。そしてそれは一人でできるものではなく、技術者の育成も自身の役割と自覚しています。NOKグループが掲げる『愛情と信頼に基づく人間尊重経営』は、技術者育成においても大切な考え方です。技術力の向上と技術者のウェルビーイングの両立を意識した研究開発システムを構築して、好奇心に満ち溢れた明るい技術集団をメンバーとともに作っていきたいと思っています。

message

学生へのメッセージ

学生へのメッセージ

研究開発の過程は、暗中模索ともいえる厳しいものですが、執念をもって取り組んだ結果が価値あるものとなったとき、本質に辿り着いた手応えを得ることができます。それを実現するには、シンプルに「知りたい」という好奇心も重要です。好奇心と研究開発に取り組む執念を育んでくれたのは、これまでに出会った多くの方々の存在や、積み重ねてきた経験だと思っています。何事にも謙虚な姿勢で、まずは興味をもって取り組むことが、視野を広げてくれます。学生とお話をすると目的意識が高い方が多いのですが、同時に視野の狭さを感じることがあります。就職活動は幅広い企業を知ることが出来る数少ないチャンスなので、視野を広く、興味のない企業でもお話を聞かれてみることをお勧めします。研究開発の仕事を目指す学生の方々が、私の考えやNOKグループの環境に少しでも興味を持っていただければ嬉しいです。ぜひ当社を「ちょっと覗いて」みて欲しいと思っています。